このコンペの企画に関わって、2年が過ぎます。初年度は検索サイトに支配されている賃貸市場をテーマにし、今年は、ワンルームの新しい解釈を求めていました。どちらも不動産賃貸の「常識」とか、「一般的」という名の呪縛からの開放を模索してきました。答えの定まっていないこの設問に今年は150以上の学生が参加し、挑戦してくれたことを大変うれしく思います。
「(Share House)2」
今の常識の外にあるモノから考えることで、もしかしたら新しい未来の常識が生まれるのではないか? 私は、こんなデザインプロセスが好きなのですが、そういった意味で、(Share House)2は、ワンルームに、3人で住むという非常識極まりない提案の中に、「夜寝るだけのワンルーム」、「つながりを求める若者」、「低所得者層の増加」など、社会問題も見え隠れしていましたし、応用範囲も広いとひそかに期待していました。
ただ、非常識を補うだけの建築的なアイデアを提示し、快適であるとか、魅力的であるというレベルには達していなかったのが残念です。
まだ学部2年。切り口をより鮮明にするプレゼンと建築的な設計手法を身に付けて、次回もチャレンジしてほしいと思います。
「seta house -出窓の家-」
ワンルームの中に、前の居住者の跡を残し、使い続けていく家具の様な1室(「出窓」)を挿入する案で、原状回復という不動産業界の常套手段に対して、新しい方法を提示している点で高く評価しました。
そして、出窓というタイトルの付け方や、出窓以外を改修しないという予算配分、世田谷の地域性を取り込むなど、緻密な戦略が見え、プロ顔負けの設計&プレゼンと言えるでしょう。
書院造建築の付書院の様に、時代を代表するような汎用性に可能性を感じつつも、最後まで魅力を感じなかったのが、プランでした。広いテラスとリビング・ダイニングが、この「出窓」によって分断されてしまいますし、書斎としての魅力を感じなかったのが残念な点です。
資質十分な優秀な3人です。これからさまざまな建築的な経験を積み、社会を変えるような作品を作り上げてほしいと願っています。
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