建築の寿命が年々延びていくという状況下でも、インテリアは時代の変化によって否応なく更新させられる。器である建築の寿命が尽きるまで、時代の変化に翻弄されながら繰り返し更新されたインテリアデザインは、新たな生活スタイルを知として蓄積し、器が生まれ変わる際にそれを持って器に変化を促す。
インテリアデザインは建築を感化する。居住という精密な審査を受ける住居においては、より顕著に。インテリアは儚い寿命の中でそんな役割を持っていると思う。
最終審査は、甲乙つけがたい状況に難航しました。
優秀な案がたくさんある中で、最優秀案が高く評価されたのはこの発想が持つ秘めたる可能性だと思います。大小様々な形の開口部をもつこの物件に沿った提案でありながら、その開口部に対する視点は、建築設計にもフィードバックし得るものであると感じました。
「ENGAWA」
日本建築の伝統的空間要素を利用したENGAWA案は、浴室周りの抽象度の高さが懸念事項であったが、内外に渡る縁側のシークエンスがこの物件の特徴であるいびつな平面形状を縁側空間の変化として絡めとりながら、広くはないこの物件に「距離」という豊かさを与えている興味深い提案でした。
「ワンルーム路地」
ワンルーム路地案は、三面開口に対するポジティブな壁の配置が作る明快な空間が強く印象に残り、一次審査の通過となりました。生活に対する緻密さに関しては、更なる飛躍に期待します。
提案の中には、居住性に対して素っ気ないと思えるものもありました。でも、もしかしたら将来的にこの価値観はスタンダードになるのかもしれない。遠くはない未来で、新しい世代の考える多様な生活スタイルが現実化し、目にすることを楽しみにしています。
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