今回のコンペは、不動産会社のラ・アトレさん主催の「学生実施コンペ」ということで、建築的に面白く、かつ実際「1/1」でたち上がったときに良い空間であるか、また完成した後、不動産として借り手がつく提案であるか、など「アイデアコンペ」とは違う様々な審査基準から審査していきました。
学生時代、設計課題などを通して設計の力を付けていく訳ですが、「実際に建たないのだから」とか「アイデアとして面白ければ良い」とリアルからは目を背けている人は少なくないような気がします。設計する力が急成長する学生時代、リアルに重きを置き過ぎるのは好ましくないのかもしれませんが、アイデアとリアルを切り離して考えるべきでなく、リアルを考えたアイデアに魅力があると感じます。
今回の募集は、「実施コンペ」なので、まずリアルを考えないといけない。これは学生時代ではあまり無い機会ではないでしょうか。提案された多くの案は、アイデアを実現するための考えが表現されており、魅力的な案が数多くありました。
その中でも最優秀を勝ち取った澤田さんの案は、今回の部屋の立地や大きさに対して、素直に設計されており、図面からも模型からも実際できあがったら気持ち良い空間になりそうなことが伝わってきました。工法も難しいことはしていないので、恐らく殆ど提案された状態のまま実現できるのではないでしょうか。きっと良いモノができると確信していますので、頑張ってもらいたいです。
植賞となった内田さん、森田さんの案は、ただ壁を斜めにするだけという案で、シンプルな操作で空間に変化をもたせたところが、やり方としてスマートで建築的にも面白く、その点で高く評価されました。牧さんの案は、間仕切りを全てカーテンで仕切る提案なのですが、仕切り方が平面を田の字に切っており、この潔さに好感を持ちました。
このコンペを通してリアルを考えながら設計した経験が、今後のみなさんの設計の良いきっかけになればと思ってます。
植美雪
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